ひっとかくれ

ただのブログ

映画『窮鼠はチーズの夢を見る』感想

原作は読まないままで見に行きました。とりあえず前情報としては、主人公がクズであるということと、結構濡れ場があるよということだけを聞いていきました。現役ジャニーズの真っ裸が合法的に見られる(ドッキリGPの風磨以外で)なら見てみようかなって。

大倉くんが主演ですが、この映画は大倉くんのファンより成田凌くんのファンが見るべきだと思いました。あんなに目うるうるさせて、色気あって、成田凌めっちゃ可愛いなぁおい……。ただ絶対に成田凌演じる今ヶ瀬は近くにいて欲しくないって思いました。だって面倒くさいもん。

比喩がめちゃくちゃ上手く使われている映画だなぁって感心しました。だからこそ、台詞・行動・物の意図するところは何だったのか読み解きたくなる。
映画の字幕を使って恭一の心情を表現するのお洒落すぎて心が震えた。

最初は今ヶ瀬が優位に立ってグイグイ押してくるのに、後半は恭一が主導権を握っているように変わっていくのが非常に面白かったです。窮鼠はどちらで、俎上の鯉はどちらなのか。

濡れ場は思ってたよりあったけど、思ってたほどではなかったというか、私が構えすぎてた。おっくるぞ!ってそわそわしてしまった。思春期か。映像より音のほうにやられた。
セックスしてるよりも、テレビ見ながら相手の髪の毛いじったりポテチ食べさせたり、耳かきしたり、屋上で乳首位置あてゲームしたりする、そんな何気ない日常に、パートナーと過ごすことの幸せが見えて胸がきゅんとした。ポテチのシーン死ぬほど好き。屋上のシーンでは洗濯物干してるおばさんが、ぎょっと2人見てるのが面白かった。

大倉くん演じる恭一がクズだって聞いてたけど、さしてそう感じなかった。ただ、コンクリート打ちっぱなし、木目調の家具の部屋なのが、やっぱめちゃくちゃ気に食わねぇ奴に違いね~~~!!って思った。(偏見)
すぐに体の関係持っちゃうところは全く共感できないけれど、やましい気持ちがあるとき声色変わっちゃう所、気づかれていることに気づかない鈍感さ、さして分かってもないのに反射的に分かるって同意しちゃうところ、早くこの時間が過ぎて欲しいなって気持ちだけで言うごめんには、わりとそういう場面あるよなって共感覚えてしまった。深く繋がろうとする人にとって恭一はクズだろうけど、日常でなんとなく付き合う程度の人にとっては恭一は普通にいい人なんだろうなって思う。
ドライブするところで、次付き合うなら俺と違ってもっと情が深い人と付き合えよって言うけど、今ヶ瀬が帰ってきたって気づいて今ヶ瀬が入れるスペース開けてベッドの端に寄ってあげるところとか、誕生日にわざわざ生まれ年のワインプレゼントして自然と来年も一緒にいると思ってるところ見ると、決して冷たいだけの人ではないんだろうとも思う。

元奥さんの「私が何か言いだすのを待ってる。そういうところが気持ち悪いの。」っていう言葉で破綻する夫婦関係がめちゃくちゃリアルだなって感じました。そうよね、嫌いになるっていうか気持ち悪くなるんだよね……。

浮気相手のザ・女子感がすごく良かった。別れちゃったの私のせい?って聞いて、そんなわけないって言われたとき、どういう気持ちだったんだろ。自分に責めが来ないことに安堵しつつも、ちょっとは悔しかったり寂しかったりするんだろうか?

登場人物みんな面倒くさい人だと思うけれど、今ヶ瀬が最も面倒くさい人だなぁって思う。せっかく手に入れた恭一との生活を、恭一のこと信じられないからって自ら壊していって、それでいて後からやっぱり半年に1回でもいいから会いたい側にいたいとか言い出すなんて、なんて面倒な人なんだ。
ワインをプレゼントされてビックリして、無くなっちゃうから飲まないって言ったら、来年またやるよって返されて、恭一が自然と来年も一緒にいるって思ってるなんて信じられないって顔が、最高に好きでした。
「心底惚れるって、すべてにおいてその人だけが例外になっちゃうんですね。」って言うくせに、自分が恭一の例外になってるとは思えないんだもんな。そう信じさせてあげられない素行の恭一もたいがいだけど。恭一自身はっきり自覚したのは今ヶ瀬いなくなってゲイバー行ってからだよね?きっと。

好きになりすぎると自分の形を保てなくなるって言う環の言葉は、今ヶ瀬にピッタリ当てはまるなって思う。恭一の「お前はいらない。」は「(自分の形を保てなくなった)お前はいらない。」だったと思いたい。あそこでいらないって言うの、いくらなんでも可哀そうじゃん……。

夏生が出てるシーンは全部気が重くなる。でも夏生に対してマウントとってる今ヶ瀬はめっちゃ可愛い。酔った恭一を送ってきた夏生に対しての言動とか、恭一がカールスバーグ頼んだときの笑いとか。お前選ぶわけにはいかないよって言われた後の今ヶ瀬表情本当に切ない。

環は可愛いし良い子だし強い子だけど、カーテン届いたの一週間くらい前かなって言われたときに喧嘩できない時点で、たとえ結婚したとしても元奥さん同様に別れることになるだろうなって思いました。皿洗い終わったら帰るねって言ったら、恭一がもういいから帰りなって水止めるシーンがめっちゃ怖いし、環可哀そうじゃない?この後すぐ恭一は今ヶ瀬とセックスすんだぜ……?ダッサいカーテンって言われてたのも、環自身をダサいって言ってるんだろうなって思って、環がちょっと憐れだった。

恭一が、流されずに今ヶ瀬を待つって決めたラストシーンを見てたら、なーにをお前だけなんかすっきりした顔してんねん!今ヶ瀬は泣いてるんだぞ!って思ってしまったけど、今ヶ瀬の我慢で成り立つ関係でもあるので、今ヶ瀬が自分から帰ってこない限りは始められないんだね……。
この先きっと今ヶ瀬は帰ってきて、辛くなって出て行って、また泣きながら帰ってくるのを繰り返すだろうなと思うし、これからの恭一はずっと居場所作って待ってるんだろうと思う。2人とも、どちらも窮鼠であり、俎上の鯉である感じしますね。

「あいつはいつも辛そうだった。俺は幸せだったんだけどね。」っていう台詞が自分勝手な恭一らしくて、また映画で描かれなかった2人の生活にも思いを馳せてしまって、軽く発せられたような言葉なのにとても印象に残りました。

見ながら他にもいろいろ思ったけど、なにぶん思うところが多すぎて忘れてしまった部分もある。
時間があったらまた見たいと思える良質な映画でした。

 

帰宅してからパンフレットや大倉くんのブログを読んでみました。
パンフレットに寄稿された映画評論家の方とは気が合わないなって思いました。
大倉くんがブログに書いてた、ト書きにない女性に対する酷い行動は、環が皿洗いしてるときに水止めたことだと思うんですけど、どうなんでしょうか?